反タクシン運動発端のシン株売却問題、タイ最高裁が課税命じる判決

【タイ】タイ最高裁判所は11月17日、タクシン一族のシン・コーポレーション株売却を巡る税務訴訟で、国税局による176億バーツ(約840億円)のタクシン・チナワット元首相への課税を認めた。タクシン一族は2006年以来、個人取引による非課税、名義株主を通じた売却、課税手続きの違法性、政治的迫害などを主張して納税回避を試みてきたが、20年近くを経てタクシン元首相本人に納税義務があるとの判断が下された。

 問題の発端は、2006年1月のタクシン一族によるシン株のシンガポール政府系投資会社テマセクへの売却。当時首相だったタクシン氏は、通信事業における外国人保有比率の上限を25%から49%に引き上げる法改正を政府に実施させて20日に施行し、23日にシン・コーポレーション株49%を733億バーツでテマセクに売却した。

 政治を利用した自身への利益誘導や、タクシン元首相や名義株主だった家族も納税を回避していたことが国民に広く知れ渡り、反タクシン運動の火種となった。街頭デモが拡大して政治的混乱を引き起こし、同年9月にはクーデターが発生。国連総会出席のためニューヨークに滞在していたタクシン氏は、帰国せずにそのまま逃亡生活に入った。

 2017年、国税局が正式に課税を通知し、タクシン側が裁判に訴えた。2022年には中央税務裁判所が課税手続きは違法と判断し、タクシン側が勝訴。2023年の特別控訴裁判所でも同様に課税は違法と判断された。

 最高裁は今回、下級審の判決を覆して国税局による課税通知は有効と判断。今後1、2カ月で正式な徴収命令が発行される見込みとなった。176億バーツは個人所得税に追徴課税や手数料を加えた合算額。

王宮前広場で党大会を開き、納税不要の説明に臨むタクシン首相(2006年3月) 写真:newsclip

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