中東緊張の高まりで金と原油に資金シフト タイ運用各社が投資家に警鐘

【タイ】タイのメディアが伝えるところによると、中東情勢の緊迫化を受け、タイの大手資産運用会社などが投資家に対し、金や原油への投資比率を高めるよう相次いで呼びかけている。地政学リスクの上昇で市場の変動性が高まる中、証券当局も市場の安定性を注視している。

 UOBアセット・マネジメント(タイ)は、短期的には金価格と原油価格が底堅く推移する可能性が高いとみている。ただ、上昇が持続するかどうかは、1)軍事攻撃がエネルギー関連施設に及ぶか、2)イランがホルムズ海峡を封鎖できるか、3)中国やロシアが関与を拡大するか、という3つの要因に左右されると指摘する。

 同社は、今回の衝突は過去の一時的な緊張とは異なり、イランの体制転換を視野に入れた政治的目的がうかがえる点が特徴だと分析。事態が長期化すれば、世界経済への影響も一段と大きくなる可能性があるという。

 想定されるシナリオとして、同社は3段階を示す。最も可能性が高いのは、地域全体に波及せず比較的早期に収束するケース(確率60%)で、北海ブレント原油は1バレル75~80米ドル程度で推移すると見込む。インフレ圧力は抑制され、株式市場の混乱も一時的にとどまるとし、金や原油をヘッジとして保有しつつ、株価下落局面では選別的に株式を積み増す戦略が有効だとしている。

 次に、戦闘が数週間に及ぶ、あるいはホルムズ海峡が部分的に封鎖されるケース(30%)。原油価格が数カ月にわたり80米ドル超で推移する可能性がある。エネルギー価格の上昇がインフレを加速させ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ余地を狭め、(景気停滞と物価上昇が同時に進む)スタグフレーションのリスクが高まると警告する。この場合、金と原油の比率を高め、株式の比重を落とし、業績が安定したディフェンシブ銘柄を重視すべきだとしている。

 最悪のケースとして、地域全体を巻き込む大規模な戦争に発展する「テールリスク」(10%)を挙げている。この場合、原油価格は1バレル100米ドルを大きく超え、供給ショックを通じて世界経済が景気後退に陥る恐れがある。資本保全を最優先し、株式を大幅に減らす一方、金、エネルギー関連資産、高格付け債券への配分を増やす必要があるとしている。

 また、証券会社トリニティ・セキュリティーズは、世界的なリスク回避の動きにより、タイ株式市場も資金の逃避先として債券、金、商品市場に資金が移る影響を受けやすいと指摘する。短期的にはエネルギー上流関連株が支えられる可能性があるものの、株価水準はすでに割高感があり、タイ証券取引所(SET)指数の上値余地は限られるとの見方を示した。

 地政学的な不透明感が続く中、金と原油は引き続き重要なヘッジ手段とされる。タイ市場自体は混乱した状況にはないが、世界的なリスクの高まりを踏まえ、柔軟な資産配分と慎重な株式投資、安全資産の活用が求められるとしている。

 一方、CGSインターナショナル・セキュリティーズは、タイ経済の先行きについて慎重な見方を維持し、今年の国内総生産(GDP)成長率を1.9%と予測する。個人消費や投資は底堅いものの、最近の回復は景気刺激策に支えられた面が大きく、対外的な不確実性は依然として残ると分析する。

 証券取引委員会(SEC)も中東情勢の動向を注視し、資本市場への影響を評価している。タイ証券取引所(SET)、新興市場、先物取引所、デジタル資産取引所はいずれも通常通り運営されていると説明し、必要に応じて市場安定化策を講じる用意があると強調した。投資家に対しては、信頼できる情報源に基づき、リスクを十分に見極めるよう呼びかけている。

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