中東情勢を巡りタイ政府が総合対応 エネルギー安定を強調、経済・国民保護で影響最小化へ

【タイ】政府は、中東地域で続く武力衝突を受け、エネルギー供給や金融市場の安定を維持しつつ、経済、貿易、観光への影響を抑えるための総合的な対応策を確認した。アヌティン・チャーンウィーラクーン首相は、タイは引き続きエネルギー面での安全性を確保しており、金融市場も安定していると強調した。

 アヌティン首相は3月2日、首相府で関係閣僚、国家安全保障会議、国家経済社会開発評議会の幹部らを集め、中東情勢の評価会議を主宰した。財務、外務、商務、労働、国防、エネルギー、運輸、観光スポーツなどの担当閣僚に加え、オンラインで関係機関の責任者が参加した。

 会議後の記者会見で首相は、「政府は情勢を継続的に注視し、すでに各分野で対応方針と措置を決定している」と説明。国際社会や国内に対しても、政府の立場と対応を正確に伝えるよう関係機関に指示したという。現時点でタイへの影響は管理可能な範囲にとどまっており、政府は影響の緩和を急ぐと同時に、あらゆる分野で新たな機会を探っていく。

 「世界情勢の不確実性が、輸送コストや国際原油価格の一時的な上昇につながる可能性がある」としつつ、世界の原油供給量は依然として高水準で、生産国が増産に動いていることから、価格への影響は限定的との見方を示した。「タイ国内ではエネルギーと燃料の備蓄が十分に確保されており、国民生活や経済への影響は抑えられる」としている。

 エネルギー面では、世界の原油輸送の約2割がホルムズ海峡を通過しており、短期的に価格が上昇したものの、全体では5%程度の上昇にとどまっているとした。国内では燃料価格安定基金などを活用し、短期的な影響を緩和できるほか、およそ60日分の石油備蓄があり、追加調達の時間的余裕もあるとした。

 貿易面では、中東向け輸出は全体の4%未満、輸入は8%で、その多くが原油であるため、直接的な影響は大きくないと分析。一方、輸送コスト上昇などの間接的影響に備え、商務省が民間と連携して対応を進める。観光面では、中東からの旅行者・観光客は全体の4%にとどまり、影響は限定的だが、中東の航空拠点に支障が出た場合、東南アジア、特にタイへの路線移転が進む可能性があり、中長期的なプラス効果になり得るとした。

 金融市場については、株式市場は小幅な調整はあるものの安定を維持しており、外貨準備高は3000億米ドルと十分な水準にある。銀行部門の自己資本比率も高く、金融システムの健全性は保たれていると説明した。

 労働面では、外務省と労働省が連携し、中東地域のタイ人労働者の状況を綿密に把握するよう指示。特にイスラエルに6万人いるタイ人労働者の状況を注視しており、帰国希望者は現時点で10~20人程度にとどまっていると説明した。イランには40~50人が滞在しており、安全確保と移動支援を続け、情勢悪化時には追加措置を講じる。

 イスラエル向け輸出は全体の0.2%、イランとの貿易は0.02%にすぎず、直接的影響は小さいと説明。ただ、中東全体では4~5%の貿易比率があり、欧州物流への波及によるサプライチェーンへの影響を警戒する必要があるとした。国内物価の監視、原材料の確保、輸出支援、24時間対応の相談窓口の設置、海外商務官との連携、インフレ動向の分析など、6つの主要対策を進める。

 民間からは、原油輸入への懸念はあるものの、政府の備蓄計画により大きな支障はないとの見方が示されたもよう。肥料や燃料などの輸出入への影響も限定的で、食料安全保障やハラル食品分野での競争力強化、地域の安定拠点としての投資誘致につながる可能性があると指摘。タイ商工会議所は、海上輸送の不安定化や労働力不足への対応として、外国人労働者の就労延長と人材育成を並行して進めるよう政府に求めたという。

写真:タイ首相府

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