【タイ】バンコク日本人商工会議所(JCC)が2025年5月7日から6月11日にかけて実施した「2025年上期日系企業景気動向調査」の回答結果がまとめられ、8月1日に記者発表された。前期比で業況が「上向いた」から「悪化した」を引いた業況感DIは、2024年下期実績「マイナス11」、2025年上期見通し「マイナス7」、2025年下期見通し「マイナス2」だった。回答企業数は、会員企業1,661社の31.8%にあたる528社。
2025年1月発表の調査では、2024年上期実績「マイナス21」、2024年下期見通し「マイナス11」、2025年上期見通し「プラス6」という回答結果になっていた。これまで、今後半年の見通しは「プラス」に転じることが多かったが、今回は「米国による追加関税」や「タイ・カンボジア国境」といった問題で景気の見通しにさらなる不透明感が広がったもよう。調査結果にはまた、実施期間が5、6月だったことから、関税問題(税率19%の発表は8月1日)と国境問題(最初の銃撃戦は5月28日発生、本格的な軍事衝突は7月24日発生)の具体的な影響は加味されてない。
2025年上期見通しは、「輸出による好影響」が一部で見られたものの、「国内の耐久財消費の不振」や「外国人旅行者数の減少」などの要因から、引き続きマイナスとなった。2025年下期見通しは、タイ政府の政策や国内の耐久消費財の回復といった期待がある一方、米国による追加関税の影響への懸念(調査当時)もあり、やはりマイナスにとどまった。
項目別の調査結果
設備投資は2025年度、「投資増」を見込む企業は全体の24%、「横ばい」は46%、「投資減」は16%。前回の調査結果より、投資増が若干増えたとみられる。
2025年下期(7~12月)の輸出動向は、「増加」を見込む企業は全体の29%、「横ばい」は62%、「減少」は20%。例として、輸出が好調な「繊維」などは、タイ・カンボジア軍事衝突の発生で陸路輸送に支障をきたしており、緊急避難的にコスト高の空路に切り替え。このような措置が今後も可能であるか未知なことから、業種によっては輸出を減らす不安もあるという。
業務計画におけるバーツ/ドルの設定為替レートは、「33.0以上33.5未満」のレンジに入る回答が全体の25.9%を占めて最多。次いで「34.0以上34.5未満」が19.6%。中央値は「33.71」。前回の調査で最も多かったレンジは「35.0以上35.5未満」(21.3%)で、継続的にバーツ高に振れている。
業務計画における円/バーツの設定為替レートは、「4.2以上4.3未満」のレンジに入る回答が全体の24.3%を占めて最多。次いで「4.3以上4.4未満」の20.8%となった。中央値は「4.3」。前回調査では、「4.0以上4.1未満」が20.7%で最多という結果で、やはりバーツ高に振れた。
経営上の問題点として挙げられたのは、複数回答の合計で「他社との競争激化」が全体の68%を占めて最多となった。次いで「国内需要の低迷」が42%、「総人件費の上昇」が40%、「原材料価格の上昇」が31%との回答になった。前回の調査結果とは、2位と3位が入れ替わった。
タイ政府への要望としては、複数回答の合計で「景気対策の促進(消費喚起)」が全体の42%を占めて最多、次いで「第2期トランプ政権への対策」が38%、「交通インフラの整備」が24%となった。製造業からの回答で順位が高かった要望として、「大気汚染対策の実施」の26%、「外国人事業法の緩和」の23%なども挙げられる。
日系企業が最近改善したと考える事項は、複数回答の合計で「交通インフラ整備」が全体の20%を占めて最多。以下、「行政手続きの電子化」が19%、「労働許可証(ワークパミット)、査証(ビザ)の発給に関する問題」が13%と続いた。