タイ民主派首相候補が議員失職危機、メディア株所有で憲法裁に告発

【タイ】タイの公共放送タイPBSなどによると、タイ選挙委員会は12日、5月14日の議会下院(定数500)総選挙で151議席(比例代表の得票率36.2%)を獲得して第1党となった革新系ガウクライ党(ムーブフォワード党)のピター党首について、下院議員がメディア会社の株式を所有することを禁じる憲法規定に違反したとして、憲法裁判所に告発し、判決が下るまで、ピター氏の議員資格を停止するよう求めた。

 ピター氏は13日に国会で行われる首相指名選挙に民主派陣営から擁立される予定だった。民主派は、敵対陣営である王党派の意を受けた選挙委が首相指名選挙前日にピター氏を告発して揺さぶりをかけたと批判している。

 選挙委委員と憲法裁判事は王党派プラユット政権が実質的に選任した。2019年の下院選でガウクライ党の前身である新未来党が躍進した際には、党首のタナートン氏がメディア会社の株式を所有していたとして選挙委が告発し、憲法裁が同氏の下院議員資格をはく奪した。憲法裁はさらに、新未来党がタナートン氏から選挙資金を借り入れたことを政党法違反と認定し、同党に解党命令を下し、タナートン氏ら党幹部16人の参政権を10年間停止した。

 ピター氏はすでに事業を停止した有料テレビ会社ITVの株式4万2000株を父親から相続していた。総選挙後、指摘を受け、全株を親族に譲渡したが、新未来党とタナートン氏の前例をみると、無傷で切り抜けるのは難しそうだ。

 ただ、皮肉なことに、王党派が自派の都合で導入した憲法条項のため、ピター氏は下院議員を失職しても、首相になる道が残されている。現行の憲法は2014年の軍事クーデターでタクシン元首相派民選政権を倒して発足したプラユット軍事政権(2014~2019年)が制定した。軍政が議員を選任した非民選で王党派の議会上院(定数250)が首相指名選挙に投票するなど、民主主義を制限する内容で、国会議員になることを嫌ったプラユット首相(元陸軍司令官)の意向をくみ、非議員が首相になることを認めている。非議員首相の条項は憲法制定時に民主派の反発を受けた。

 この条項のため、ピター氏は下院議員を失職しても、首相になることが可能だ。しかし、選挙委の告発前から、首相への道は遠いとみられていた。ガウクライ党は下院選で141議席(比例代表の得票率27.7%)を獲得し第2党となったタクシン派プアタイ党など7党と連立を組み、下院で312議席を確保した。首相指名選挙には上院も投票するため、過半数の376票にあと64票足りない。ピター氏が首相に選出されるには下院の旧与党陣営や上院といった王党派陣営の切り崩しが不可欠だが、王党派は、ガウクライ党が掲げる不敬罪の改正、徴兵制の廃止、市場自由化推進などを、自派の既得権益に対する挑戦とみなして強く反発し、票の確保は見通せていなかった。

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