タイ首相、来年度予算の編成方針を提示 「経済成長・社会保障・財政規律の均衡」を強調

【タイ】アヌティン・チャーンウィーラクーン首相は12月1日、バンコク北郊ノンタブリー県パークレット郡で開かれたセミナーに出席し、2027年度(仏歴2570年度、2026年10月~2027年9月)の予算編成に関する方針を示した。「今年度予算は依然として赤字だが、今後は赤字幅を縮小して将来の財政負担を軽減する」と述べ、財政規律の維持と経済の安定を強調した。

 セミナーには、エークニティ・ニティタンプラパート副首相兼財務相、パーラドーン・プリッサナーナンタクン首相府相ほか、関係省庁幹部らが出席した。アヌティン首相は、2027年度予算は中期財政計画(2027~2030年)に基づき、経済成長、社会保障、高齢化、気候変動など多岐にわたる課題に対応する方針だという。

 タイ首相府によると政府は現在、「経済・社会・財政の均衡」を掲げ、5つの重点分野を設定している。第1の経済分野では、短期的な景気刺激策と長期的な基盤整備を並行して進める。

 消費喚起策として(低所得者向け)福祉カードへの給付拡充、(政府が個人支出の半分を負担する)「コン・ラ・クルン(1人半分)・プラス」事業、観光促進策の「良い旅・還元あり(ティオディー・ミークーン)」などを挙げ、第4四半期に1000億バーツ(4800億円相当)規模の資金を経済に投入する計画を示した。さらに、家計債務対策、中小企業支援、グリーン経済への移行、農産物価格の安定化、観光振興、経済協力開発機構(OECD)加盟交渉なども進める。

 第2の安全保障分野では、近隣諸国との紛争解決での平和的手段を重視するほか、タイ深南部国境地域のテロ問題の解決を図る。第3の社会分野では、詐欺・ギャンブル・麻薬・国際犯罪などの撲滅を掲げ、透明性と法の支配を徹底する。

 第4の自然災害・環境分野では、洪水常襲地などでの防災ネットワークを整備し、被災者の迅速な救済と復旧を進める。さらに、温室効果ガス排出ゼロを2050年までに達成する目標を掲げ、農業分野での野焼き(残渣焼却)・焼き畑の削減、再生可能エネルギー導入、カーボンクレジット市場の整備を推進する。第5の行政分野では、法制度改革とデジタル政府化を進め、規制緩和や透明性の向上を図る。

 アヌティン首相は、最も重要な基盤は「質の高い人材」とし、教育改革を通じて個々の能力を生涯にわたって伸ばせる仕組みを構築する必要性を強調。さらに医療制度の整備、高齢社会への対応、母子保健の充実も課題に挙げた。

 財政面では、政府歳入のGDP比が低下傾向にある一方で歳出が増加しており、特に経常経費が全体の7~8割を占める現状を指摘した。中期財政計画に基づき、2029年度までに赤字幅をGDP比3%以内に抑え、債務残高をGDP比70%以下に維持する目標を示した。「各省庁の予算要求は前年度比で20%以内の増額に抑え、その増額分は投資に充てるべき」と述べ、経常経費の抑制と効率的な予算執行を求めた。これにより、2027年度予算総額は前年度比0.2%増の3兆7880億バーツにとどめたいとした。

写真:タイ首相府

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