【タイ】日本の政府開発援助(ODA)実施機関として開発途上国への国際協力を行っている独立行政法人「国際協力機構」(JICA、本部:東京都千代田区)による「日ASEANサイバーセキュリティ能力構築センター(ASEAN-Japan Cybersecurity Capacity Building Centre:AJCCBC)」の新研修施設がバンコクに完成、8月18日に開所式が行われる。ASEAN地域全体のサイバーセキュリティ能力強化を目的とした「サイバーセキュリティとデジタルトラストサービスに関する日ASEAN能力向上プログラム強化プロジェクト」の一環で、場所はバンコク郊外のタイ国家サイバーセキュリティ庁(NCSA)内。
日本は令和3年12月に策定された「サイバーセキュリティ戦略」や「開発途上国に対する能力構築支援に係る基本方針」に基づき、開発途上国の対応能力強化に取り組んでいる。その中でJICAは、日本の総務省やNCSAと協力し、AJCCBCを中心としたASEAN地域の人材育成環境の強化を図っている。同センターを拠点として米国、カナダ、オランダ、スイスなどの国とも連携しながら研修を行っており、地域全体のサイバーセキュリティ対応能力向上に貢献している。
今回、ASEAN地域とのさらなる連携の象徴として新たにAJCCBCを開所。より多くの研修やワークショップを柔軟に実施することが可能となり、ASEAN諸国とのサイバーセキュリティにおける連携強化にさらに貢献することが期待される。
また、同日から同技術協力プロジェクトによる第38回「AJCCBCサイバーセキュリティ技術演習」が開始され、ASEAN各国から推薦された政府関係者や重要インフラ事業者が受講者として参加。総務省が提供するサイバーセキュリティ研修であるCYDER(Cyber Defense Exercise with Recurrence:実践的サイバー防御演習)のシナリオを最新の脅威動向や技術トレンドを踏まえて刷新したランサムウェア版によって実施する。CYDERは、サイバー攻撃を受けた際の一連の(インシデント)対応をクラウド上に構築した複数の仮想コンピュータシステム環境を用い、ロールプレイ形式で体験できる実践的な演習。
JICAによると、サイバー空間は国境を越えて利用される領域であることから、脆弱な国が攻撃の踏み台となる恐れがあるため、自国の安全確保には国際連携が不可欠。日本を含む世界全体のリスクを低減するためにも、開発途上国への能力構築支援を通じて、より安全なサイバー空間の実現を必要とする。
特にASEAN地域は、日本との政治・経済面での関係が深く、安全保障の観点からも協力が重要。急速なデジタル化の進展に伴い、同地域ではセキュリティの脆弱性やサイバーセキュリティ人材不足といった課題が顕在化しており、能力構築支援を通じて地域全体の安全性を高めることが求められるとしている。
JICAは、開発途上国が直面する課題を解決するべく、技術協力、有償資金協力、無償資金協力など日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う二国間援助の実施機関。150以上の国と地域で事業を展開している。