【タイ】政府は4月8日、世界的な原油価格の高騰で石油燃料基金の赤字が拡大していることを受け、国内の石油精製業者に対して軽油の精製出荷価格を1リットルあたり2バーツ引き下げるよう命じた。燃料価格制度への大規模な介入となる。
国家エネルギー政策委員会(NEPC)が、石油不足の是正・防止に関する非常法令(1973年)に基づく権限を行使して決定した。国内で操業する全ての精製所に適用され、違反した場合は刑事罰を含む法的措置の対象になると警告している。
中東情勢の緊迫化により国際原油価格が上昇し、国内の軽油小売価格は1リットルあたり50バーツを超えた。石油燃料基金は、3月1日時点で24億5900万バーツの黒字だったが、4月5日には532億2600万バーツの赤字に転落した。政府は、基金による補助に依存し続けるのではなく、精製業者にも負担を求める必要があると判断した。
アカラナット・プロムパン・エネルギー相は、生活費の抑制と精製マージンの管理を目的とした「歴史的な石油価格構造改革」を進める緊急措置だと説明。国内の精製業者に対し、世界的なエネルギー危機への対応として協力を求めた。
今回の措置の柱は、精製価格の算定方式の変更。これまでシンガポール市場価格を全面的に参照する「輸入パリティ方式」を採用してきたが、今後はシンガポールの指標価格から一定額を差し引く「シンガポール・マイナス方式」に切り替える。政府は、危機下でシンガポール市場に100%連動させる合理性はなく、実際のコストに近づける特別な仕組みが必要だとしている。
政府の調査では、3~4月の精製マージンは平均で1リットルあたり7バーツと異常に高水準だった一方、輸入や保険に伴う追加コストは同3バーツにとどまっていた。精製マージンは4月7日時点で同17.49バーツに達し、紛争初期の3月2日の同2.28バーツから急上昇していた。政府は、この差の一部を精製業者が吸収できると判断した。
NEPCの決定により、軽油B7とB20の精製出荷価格は即時に2バーツ引き下げられる。付加価値税(VAT)の効果もあり、小売価格は最大で2.14バーツ下がる可能性がある。官報に4月8日付で掲載され次第発効し、石油燃料基金委員会が小売価格への反映を検討する。順調に進めば、4月9日から給油所での価格が下がる見通し。
政府は当面、3月のデータを基準に精製マージンを1~2週間ごとに見直す方針で、状況が改善しなければ値引き幅を3~5バーツに拡大する可能性もある。今回の措置は精製業者を赤字に追い込むものではなく、例外的な局面での過剰利益を抑える狙いだとしている。現在、石油燃料基金は軽油補助に1日10億バーツ以上を支出しており、将来世代の負担に依存する形を避けたい考えだ。
タイには6カ所の精製所があり、日量27万5000バレルのタイ・オイル、同28万バレルのPTTグローバル・ケミカル、同21万5000バレルのIRPC、同12万バレルのバンジャーク、同17万4000バレルのバンジャーク・シーラーチャー、同17万5000バレルのスター・ペトロリアム・リファイニング(SPRC)が国内供給を支えている。
アカラナット・エネルギー相は、「原油供給を日々確認しており、4月分として3000万バレルを確保済みで、5月分も1800万~2000万バレルの調達見通しが立っている」と説明。精製能力が国内需要を上回っているため、供給面では比較的余裕があるという。ソンクラーン期間中の燃料不足はないとしつつ、新制度移行期に価格変動が大きくなる可能性があるとし、買い占めや不当な値上げを警戒している。
























