中東情勢長期化でバーツ安進行、1米ドル=35バーツ視野に

【タイ】タイの大手商業銀行カシコン銀行傘下のカシコン・リサーチセンター(Kリサーチ)によると、中東での武力衝突が長期化した場合、原油価格の高騰を背景にタイ通貨バーツが対米ドルで下落し、1米ドル=34〜35バーツ水準まで弱含む可能性がある。衝突が2カ月続くシナリオを最も現実的とみており、国際原油価格が1バレル=100米ドルを超える水準に上昇すると予測している。原油高はバーツ相場に下押し圧力をかけ、為替の変動幅も拡大するという。

 今回の紛争はすでにバーツ相場に大きな影響を及ぼしており、年初来の変動率は9%と、前年の7.5〜8%を上回っている。対米ドルでは4%下落し、アジア通貨の中では韓国ウォンに次ぐ下落率となっている。不確実性の高まりを受け、タイの国内総生産(GDP)成長率は、最も可能性の高いケースで0.5ポイント程度押し下げられる見通し。

 中東情勢の緊迫化により、ホルムズ海峡を通過する海上輸送の制限が強まり、エネルギー価格が急騰している。これにより、石油化学分野での原材料不足や、今後数カ月にわたる世界的な食料価格の上昇など、国際経済全体に連鎖的な影響が及ぶとみられる。すでに地域内の貿易や航空輸送にも支障が出ており、便数の減少や渡航費の上昇が確認されている。

 金融面では、米ドル高がアジア通貨全体に重荷となっており、エネルギー輸入依存度の高いタイにとって影響は大きい。資本市場、バーツ相場、国内外の景気に悪影響を及ぼすほか、インフレ圧力を強め、景気停滞と物価上昇が同時に進む「スタグフレーション」のリスクも高まるとしている。タイ中央銀行(BOT)を含む各国の中銀は、利下げの先送りや金融緩和の抑制を迫られる可能性がある。

 イランを巡る緊張が1〜3カ月続き、ホルムズ海峡の供給網に支障が出るとの前提で、タイの経済成長率は0.2〜0.7ポイント低下し、通年では1.9%にとどまると見込む。この場合、原油価格は期間中100米ドル超で推移し、2026年の平均価格は1バレル=75〜90ドルになると予測している。

 さらに、原油価格が3カ月以上にわたり130米ドルを超える最悪の事態では、消費者物価上昇率がタイ中央銀行の目標上限である3%を上回り、2026年の経済成長が停滞する恐れもあるという。

 エネルギー価格の上昇を背景に、国内ではすでにインフレ圧力が強まりつつあり、実体経済への影響は今年第2四半期以降により鮮明になる見通しだ。財政余力がロシアのウクライナ侵攻時よりも限られているため、政府によるエネルギー価格補助にも制約がある。

 同センターは、補助金政策は引き続き必要としつつも、対象、価格水準、期間を絞った重点的な支援に改めるべきだとしている。

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