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〈タイ業界事情〉戦略情報システムにおけるAI機能の学習機能と進化について BANGKOK TOKI SYSTEM CO., LTD.
- 2025/9/9
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難波 孝次 氏 Managing Director
今回は前回の続きという事でまた戦略情報システムについてのお話となりまして、前回の内容はと言いますと生成AI機能を用いた分析結果を戦略情報システムに活かす手法について話をさせていただきましたが、その中で会計情報を様々な面から分析した結果を活用する手法について、ただ一口に会計情報と言いましても勘定科目だけで多いところでは何百種類も存在して更に損益部門との組み合わせや後は時間的な因子を考えますとひと月だけの分析だけでは収まらず、少し考えただけでも物凄いデータボリュームに対して分析作業をおこなう必要があるように思われます。そこで今回はこの分析作業に照準を絞りましてどのようなロジックを用いればこの膨大なデータを短時間でしかも正確に分析がおこなえるのかについて考えてみたいと思います。
ただそういった作業内容の割には今回のタイトルはかなりアバウトで大仰なものとなっており、なぜこんなタイトルに? と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、今回の内容にはAI機能にとっての学習機能と進化の違いを論ずるような話も出て来るということで、先ずは順を追って説明させていただければと考えております。
1、グループ単位での分析
分析作業をおこなうに当たりまして、前述のように勘定科目を一つずつ取り上げて何れの勘定科目が利益の向上に貢献しているかを調べていくとなると気が遠くなるような作業となることは確実でありまして、この作業をシステムサーバーの空き時間におこなうとしても、分析結果が形としてあらわれてくるのは数年後といったことにもなりかねません。そこで先ずは勘定科目をグループ分けしまして、そのグループ合計により分析をおこなう形を考えてみます。具体的には通常会計システム内での勘定科目の持ち方としまして幾つかの階層状態で登録がおこなわれているかと思いまして、例えば資産勘定の下に「現金・預金」であるとか「売掛金」や「在庫品」等の大分類がありその下に各銀行ごとの預金額や得意先グループごとの売掛金額といった形で段々と細分化されている形になっているかと思います。そこで先ずはこの大分類単位で過去の実績を元に販売利益との関連性を分析していきます。
2、年単位での分析
ただ同じ月だけ見ても利益が上がれば当たり前ですがその分資産と収益が増えるか負債と費用が減っている訳で、そこには当然の結果しか導き出されないということになりますので、そこで時間の流れを考慮する必要があり、先ずは年単位で分析作業をおこなう形とします。具体的には昨年度の利益に対する昨年度の勘定科目大分類ごとの金額、1年前の金額、2年前の金額といった形で順に見ていき同じように2年前の利益に対する過去データの推移、3年前の利益に対する過去データという風に年間単位での推移を分析して関連性を求めます。
3、詳細分析への移行
前項にて求められた結果を元にいたしまして、次のフェーズとしましては更に細かい分析作業をおこなっていきます。例えば販売利益において過去数年間の推移が減価償却費の推移とよく似た動きをしていたとしますと、今度は減価償却費の中の全勘定科目を見ていき利益の動きと同期している科目を探し出します。仮に機械減価償却費がそれに該当する科目であった場合、今度は固定資産管理システムの中より機械別の減価償却費を見て、更には年間の分析を月間の分析に細分することにより、最終的に何れの機械導入が利益の向上に寄与したのかを特定することが出来るということになります。
これは分かりやすい例ではあるのですが、他にも例えばある仕入先さんとの取引を開始したことにより利益率が向上したとか、ある広告サービスを使用するようになって販売金額が増大したとかそういった因果関係を明らかにしていきます。
4、外部データの分析方法
前回の内容として外部の情報、具体的には法定金利や為替レートであるとか天気や気温、地震や台風といった天変地異に至るまでありとあらゆる情報をネットの中から拾い上げ分析をおこなうという説明をさせていただきましたが、こちらの分析方法も基本的には前述の手法と同様となります。ただ会計データについてはいくら勘定科目の数が多いとはいえ限りはある訳で、またグループ分けがきっちり決まっておりますことから、前述のように先ずは大まかな分析を行い徐々に細分化していくという手法が採りやすい内容ではあります。それに対して外部データについては数限りないと言いましょうか森羅万象すべての事象をデータとして取り込むわけですから、そもそもどこから手を付けていいのか途方に暮れるような作業となります。そこで、先ずは片っ端から情報を取り込んでいくのではなくWEB上で公開されている為替レートや各地の天気・気温それから株価情報といった比較的取得しやすいものを対象にデータ取り込みをおこない、後は会計データと同様時間的な要因や為替や株価の更に詳細データを見ていき分析をおこなうといった手法となります。
5、AI機能における学習機能と進化について
ここでようやく今回のタイトル内容に触れるわけですが、一般的に考えられているAIの特性といたしまして、学習機能と呼ばれるものがあります。これはどういうものかと言いますと、よく例に挙げられるのが漢字変換機能でありまして、例えば「けんかいのそうい」という平仮名を漢字変換した場合に「見解の相違」のケースもあれば「県会の総意」であることも考えられます。そこで一昔前の漢字変換機能であれば、直前に使用された方を優先的に採用するというシンプルなロジックが使われておりましたが、これがもう少し賢くなっていくと今までの使用パターンを分析して使用頻度が高い方を採用するといった形から、直前に「県会」という漢字が使用されていれば「県会の総意」を採用するとか、更に賢くなっていくと直前の文章の意味を分析して次に来る漢字としてはどちらの意味がより当てはまるべきかというところまで予測できるようになっております。
これが一般的に言われる学習機能でありまして、要は分析データをどんどん溜め込んでいって成否判断を何度も繰り返すことにより、正解に近づいていくというものとなっております。これに対して今回説明させていただきます分析手法は若干毛色の変わったものとなりまして、どういうことかと言いますと会計情報を分析する際の手法として例えば減価償却費の詳細について切削機械や穿孔機械等の機械種別が10種に分かれているとしましてそれぞれの分析手順を少しずつ変えた形でおこなっていく手法を採ります。具体的には切削機械については先ず該当機械ごとで年合計推移から分析をおこない、穿孔機械については月単位の推移から分析、熱処理装置については機械グループ全体で推移分析、洗浄機械については四半期単位で推移分析といった感じで、まあこれはあくまでも説明の為の一例なのですが実際にも同様に様々な形で少しずつ差異を設けていきます。
それで何故このような面倒なやり方をおこなうのかと言いますと初期段階ではAI自身にも何れの分析手順がより効率よく正解に近づけるのかということが分からない訳で、更に言いますと人工知能とは名乗ってはおりますが現時点ではまだそういった分析手順についてはAIが自ら創作している訳ではなく先ずは人間が教え込む形を採っております。ただ教え込む側にとっても最初は何れの手法が効率が良いのかは実際のデータにて試してみないと分からないという暗中模索状態でありますことから、従来のやり方であれば様々な手法で分析作業をおこない、その分析結果を見ながら効率の良い手順を人間が探り当てて行っていた処理をAI自身にやってもらおうという点が今回の話の肝となります。
要は前述の機械種別ごとに様々な手順でおこなった分析結果を元にして、AI自身がその作業に要した時間やら結果内容を元にして何れの分析手順が最も効率が良かったのかの判断をおこなう形となりまして、もちろん分析対象が異なっていればデータボリュームの違いによる処理時間の差についても考慮しないといけませんので単純に処理時間のみでの判断は出来ないのですが、それでも手順の組み合わせを入れ替えたり分析対象となるデータ件数による比較をおこなうことにより、かなり正確な結果を期待することが可能となります。ここで得られた結果により次回はより効率の良い手法を優先的に採用することにより、徐々に処理時間を短縮していくという形を目指します。
この分析手順の模索処理については、先に説明をおこないました学習機能が学習対象となるデータを増やしていくことにより賢くなっていく方法とは若干異なっております。AIの学習機能を人間に例えると生まれたばかりの子どもが徐々に知識を蓄えていく状態だと言われるのに対して、今回説明させていただいた内容は生物が生き残りをかけてその形態を変えていき、最終的に生活環境に最も適した形態を持ったものが生き延びていくという所謂生物の進化に例えた方がしっくりするかも知れません。
ということで、今回のお話は何だか表題が大げさなでかつ説明の例が少し分かりづらかったかと思いまして、次回はもう少し分かりやすい例を元に話を進めてみたいと思っております。
BANGKOK TOKI SYSTEM CO., LTD.
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