【タイ】タイ政府と民間が共同で進めるドーンムアン、スワンナプーム、ウタパオの3空港を結ぶ高速鉄道計画をめぐり、ピパット・ラチャキットプラカン副首相兼運輸相が、国からの拠出方法を完成後の一括払いではなく、「出来高払い方式」に改める契約修正案に反対する姿勢を示した。当初の契約と矛盾するとの理由からで、事業の先行きに不透明感が広がっている。
同プロジェクトは、2019年10月にタイ国鉄(SRT)とアジア・エラ・ワンが締結した、共同投資契約に基づく。アジア・エラ・ワンは、タイ最大財閥CPグループ主導のコンソーシアムが設立した特別目的会社(SPV)で、バンコク・エクスプレスウェイ・アンド・メトロ(BEM)、大手ゼネコンのチョーガーンチャンやイタリアンタイ、中国鉄建などが参加する。国の拠出額は1172億バーツで、当初は政府の強力な後押しを受けていたが、事業は繰り返し遅延し、すでに6年以上の遅れが生じている。
プラユット政権時の2021年、コロナ禍によるエアポートレイルリンク(ARL)の利用者が急減したことを機に、アジア・エラ・ワンが出来高払い方式への契約修正を提案。その後のセーター政権、ペートーンターン政権下で契約修正の交渉が続いたが、合意には至っていない。SRTが運営するARLは、2010年に開業したスワンナプーム空港とバンコク都心部を結ぶ既存路線で、今回の高速鉄道計画に組み込まれる予定。その譲渡料(106億7000万バーツ)の支払い方法も、交渉の焦点となっている。
ピパット副首相は10月1日、現政権の任期は4カ月、下院選までの暫定期間を含めても8カ月しかなく、未解決案件の処理が急務と強調した。そのうえで、「一括払いから出来高払いへの変更は当初の契約に反すると思われ、法に抵触するものは承認しない」と述べた。
一方、東部経済回廊事務局(EECO)関係者は、「出来高払い方式は最終合意に至っていないだけで、プラユット政権時に原則承認されている」と説明。SRTが進捗を確認したごとに国が分割で拠出し、そのつど資産が国有化される仕組みだという。SRTもまた、「出来高払い方式が国に不利益を与えることにはならない。国が支払った時点で資産は直ちに国有化される」としている。
契約修正案はすでにタイ最高検察庁(OAG)の審査を通過し、95%以上の条項が承認された。残りについては、ARL譲渡料の支払いを前倒しするなど、国益を高めるための修正が勧告されている。ただ、ピパット副首相が反対姿勢を崩さない場合、SRTは政府に修正案を提出しなければならず、交渉が振り出しに戻る恐れがある。
パッタヤー駅完成予想図 画像:We are CPホームページより