【再録・タイ人あるある恐怖体験】⑬ 和風キャビネットだと思ったら…….

♂ 20代 バンコク出身バンコク在住

 ある日、お母さんがタラート・ロットファイ・シーナカリン(市場)で、中古の美しいキャビネットを買った。どうやら日本から入ってきたものらしく、タイでは見たことのない作りになっていた。濃い茶色、観音開きの扉の中は金色に輝いていた。お母さんはその美しいキャビネットをホン・プラ(仏間、仏像を安置する部屋)に置いた。

 僕はその夜から、金縛りや悪夢に悩まされるようになった。悪夢では女が激しく悲鳴を上げる声を聞いたり、黒くて長い髪の女の後ろ姿を見たりした。金縛りに遭っているときに霊を見ることはなかったが、キーンと耳が痛くなるような耳鳴りや、何かが体の上に乗っていて苦しくなるようなことが多かった。ほかにも、誰もいないはずの2階から歩き回るような音が聞こえたり、誰も使ってないはずのシャワー室の床が濡れていたりと、怪奇現象がたびたび起こっていた。

 そんなことが毎日のように続いて、僕はちゃんと睡眠を取ることもできずノイローゼ気味になっていた。当時は、遺産のことで揉めていた親戚に呪いをかけられたのではないかと思ったり、おじさんにもらった年代の乗用車に憑(つ)いた幽霊の仕業かと思ったりもした。

 しかしそんな不思議なことが起こりはじめてから1年くらい経ったころ、お母さんが知り合いから紹介された霊能者に来てもらうことになった。霊能者は仏間でお祓(はら)いを始めた。それが終わった後、霊能者は、

「歳をとった女の霊の仕業だ。その棚に憑いている」

といいながら、お母さんが買ってきた美しいキャビネットの方を指さした。その瞬間、締めていたキャビネットの扉が、

「パン!」

と開いた。

「そのキャビネットをお寺に持っていって供養してあげるといい。そうするれば霊は成仏できる」

と言われた。そして、キャビネットをお寺に持っていくことに。

 以降、僕は金縛りや悪夢から解放され、ちゃんと眠れるようになった。この話をこのあるサイトの編集者に話したところ、そのキャビネットは先祖供養に使われる仏壇であることが分かった。タイには先祖供養のための仏壇はない。美しさに惹かれて、誰かの先祖が憑いている仏壇を買ってしまったようだ。これからは中古品を買う際は気を付けようと思っている。

再録:過去に掲載して人気が高かったコラムを再アップしています。

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