【タイ】タイ公害管理局(PCD)が明らかにしたところによると、タイ北部のメーコック川、メーサーイ川、メコン河を中心に水質を検査した結果、全ての河川で有害物質の濃度が基準値を超えていることが分かった。河川上流のミャンマー・シャン州での鉱物採掘などの鉱業が原因をみられる。
PCDは3月19日から5月16日にかけて3回、水質検査および堆積物のサンプリングを実施した。最も高い汚染レベルを示したのがメーコック川。チェンマイ県メーアイ郡からチェンラーイ県チェンラーイ市にかけての地点で、ヒ素濃度が最高1リットル当たり0.44ミリグラム(mg/l)に達し、基準値の0.01mg/lの40倍に達した。
メーコック川の鉛の濃度は、チェンラーイ県のミャンマー国境付近で0.076mg/l。カドミウム、水銀、マンガンなどは基準値内に収まっているという。
チェンラーイ県メーサーイ郡でミャンマー国境を成すメーサーイ川では、ヒ素濃度が全ての検査地点で基準値を超え、0.044~0.049mg/lとなった。鉛の濃度は当初の調査で基準値を超えていたが、3回目では正常値に戻ったという。メーサーイ郡は、昨年から今年にかけて豪雨のたびに洪水に見舞われ、氾濫したメーサーイ川の水が市内に流れ込んでいる。
メコン河のヒ素濃度も、チェンラーイ県チェンセーン郡の検査地点で最高0.036mg/lを記録した。3回目の調査では0.025~0.026mg/lまで低下したが、基準値を上回っている。
PCDは、「水の濁りのひどさとヒ素濃度の高さは、鉱業の悪影響を明確に示している」と説明。2014年から2015年にかけての調査では確認できなかった汚染で、ミャンマー・シャン州での鉱業が環境破壊を引き起こしている」と警告した。また、「地元で釣った魚を長期的に食べていると健康リスクが生じる」と注意を促している。
ミャンマー・シャン州では少数民族の武装勢力「ワ州連合軍」が鉱業を仕切っていると伝えられ、タイ北部の河川汚染の根源とみなされている。タイでは、「ミャンマー現政権に事態の掌握、安全管理、自然保護などの能力は皆無」と見る向きがもっぱらで、ダム建設といった国内での解決策を模索しているという。
チェンマイ県とチェンラーイ県では6月5日、地元住民ら1000人がデモを決行。シャン州に対する事業中止を求める声明文を読み上げた。
写真:タイ公害管理局(PCD)