【タイ】タイで14日に下院(定数500、任期4年)総選挙(小選挙区400議席、比例代表100議席)が行われる。
各種世論調査ではタクシン元首相派の最大野党プアタイ党、野党第2党でリベラル派のガウクライ党(ムーブフォワード党)の民主派2党が王党派・保守派の与党陣営を大きくリードしている。しかし、総選挙後の首相指名選挙にはプラユット軍事政権(2014~2019年)が議員を選任した非民選の議会上院(定数250、任期5年)も投票するため、野党陣営は下院選で圧勝し、ほぼ全議員が親プラユット・王党派の上院を黙らせることが政権奪取の条件となる。
注目を集めているのは大胆な改革を打ち出すガウクライ党だ。国王批判を禁じた不敬罪の撤廃、軍の縮小と徴兵制の廃止、県知事の公選制(現在はバンコクを除き中央から派遣される官僚が知事を務める)導入、憲法改正などで真の民主主義国家に変革すると訴え、タイの実権を握る王党派特権階級に正面から挑戦する姿勢を示している。党幹部、候補者には外見、弁舌がスマートな比較的若い世代が多く、若年層、都市中間層の支持を急速に伸ばしている。
与党陣営で注目されるのは与党第2党で財閥、政治閥の集合体のプームジャイタイ党だ。もともとタクシン派に属していた政治家が多く、選挙結果次第ではプアタイ陣営に鞍替えして新政権入りする可能性がある。与党第1党で王党派、軍の支持を受けるパランプラチャーラット党ではすでに、元タクシン派の有力政治家多数が同党を見限り、プアタイ党に移籍した。
■世論調査では野党陣営リード
タイ国立スワンドゥシット大学が4月10~20日に18歳以上を対象に実施した政党支持率調査(回答者16万2454人)で、プアタイ党は支持率41.4%で1位、ガウクライ党は19.3%で2位だった。
3位はプームジャイタイ党で9.6%、4位はプラユット・ジャンオーチャー首相兼国防相(元タイ陸軍司令官、68)が事実上の党首の王党派新党ルワムタイサーンチャート党で8.5%、5位はパランプラチャーラット党で7.5%、6位は与党第3党で現存するタイで最も古い政党の民主党で7.3%だった。
プアタイ党は31歳以上で44%以上の支持を得た。ガウクライ党は18~30歳の支持率が50.2%で1位だった。
一方、タイ国立開発行政研究院(NIDA)が4月24~28日に18歳以上を対象に実施した世論調査(回答者2500人)で、総選挙の比例代表の投票先として最も支持を集めたのはプアタイ党で37.9%、2位はガウクライ党で35.4%だった。3位はルワムタイサーンチャート党で12.8%、4位は民主党で3.3%、5位はプームジャイタイ党で2.4%。パランプラチャーラット党は1.3%で8位だった。
■投票前日夕方から酒販売禁止
タイでは総選挙にともない、13日午後6時から14日午後6時まで、酒の販売が禁止される。