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そのシステム導入、ちょっと待った! 導入の際に考慮すべき3つのこと ―1―
- 2018/9/23
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文:塚本 裕司
昨今、IOTや人工知能(AI)などの浸透により、業務効率化のための業務管理システム導入のご相談を多く頂きます。しかし、ITには詳しくなく、どのようにシステム化を進めてよいのかわからないという方も多いようです。そこで、これからシステム導入を検討されている企業の管理者様向けに、システム導入を検討する上で考慮して頂きたいことを、3回に渡ってお伝えします。
1回目は、『”出来ていないこと”ではなく、”時間がかかっていること”のシステム化を考える』 です。
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タイでは、12月が決算月という会社が多いですが、弊社も同様、そろそろ今年の決算月が近づいてきました。
決算月が近づくと、やらなければならない仕事の一つが、昇給・賞与を決める人事評価。出来るだけプラスの評価を考えたいのですが、どうしてもマイナス評価せざるを得ないのが病欠(Sick Leave)の多さです。タイでは有給休暇とは別に、病欠が年間30日まで認められています。もともと体の弱く仕方のない人もいますが、中にはズル休みしている人も。
人事評価にあたり、病欠をどれだけ各社員が取っているか把握するのに、私は人事担当にその数字を確認する必要はありません。弊社では、各従業員はスマートフォンのアプリで日々の作業日報を入力しており、病欠する場合も、そこで申請しています。
ですから、私は知りたいときに、瞬時に各社員の病欠の取得回数を知ることができます。その他にも残業時間の多さや、仕事内容についても、画面を開けばいつでもどこでも(カフェでコーヒー飲みながらでも!)集計結果をリアルタイムに確認できます。
システム化による業務の効率化とは、このようなシーンで威力を発揮します。人事担当者が全従業員の記録を集計する作業などは必要なく、各従業員の入力結果 ⇒ 経営者・管理者 にダイレクトに必要なデータを与えることができるようになります。
それでは人事担当者は必要ないのか?
いいえ、弊社にも人事担当者は必要です。なぜなら、このようなシステムを構築していても、病欠は減らないからです。各従業員が病欠を取る原因の解決に、システムは活用できません。ですから弊社の人事担当者は、病欠の多い人とは、定期的に面談をし、その理由が何であるのか確認し、働くうえでの心構えや、急に休まれると、どれだけ他の社員、お客様が困るのか、そうしたことを説明して、責任感を持って仕事に取り組んでもらえるよう指導してもらっています。
人事担当者は、勤怠の記録や病欠の回数を『集計するという作業』を仕事にするのではなく、そこはシステムに任せて、そもそも病欠が多い原因を解決するにはどうしたらよいか考え、解決案を実行し、その結果を見直す。そのように仕事を見直していくことで、システムを導入するメリットを最大限に活かせるようになります。
同様に、例えば製造の現場では、先入れ先出しによる在庫管理、ロットトレーサビリティ管理などをシステム導入で実現しようと考える方がいます。現状、紙を使って管理できているが、その集計に時間がかかっている、精度を上げていきたい、という目的ではシステムを活かせます。しかし、そもそも紙を使っても管理できていないのだとしたら、システムを導入しても問題解決できません。
『システムを導入すれば、問題は解決する、出来ていないことが出来るようになる』と考えているとしたら、これは間違いで、こうした考えでシステム導入を検討すると、無駄に機能が盛りだくさんのオーバースペックなシステムが出来上がり、『動かないシステム』となってしまいます。
私は、これまで10年間、タイで業務システムの導入を行ってきましたが、何度か、こうした『システム導入で問題が解決する』という誤解のもとプロジェクトを進めてしまって、結果、システムが動かず、そこから現実的に使える形に仕様変更を繰り返し、運用できるようになるまで長い時間がかかってしまったプロジェクトを経験しました。
ですから、これからシステム化を検討される会社様には、日本人管理者だけでなく、タイ人担当者含め、先のことをしっかり考慮いただき、有効に活用できるシステムを構築して頂きたいと思います。
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■講師
ACTY SYSTEM (THAILAND) CO.,LTD.
Managing Director 塚本 裕司
■お問い合わせ先
兼松エレクトロニクス(株) 海外戦略室
KELグローバルセミナー事務局
e-mail: zj_menbers@ml.kel.co.jp
電話番号:+81(0)3-5250-6720
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筆者プロフィール
塚本 裕司
ACTY SYSTEM (THAILAND) CO., LTD.
MANAGING DIRECTOR
明治大学卒。システム開発会社に入社し、SE・プログラマーとしてソフトウェア開発に従事。29歳でタイ・バンコクへ渡り、タイ国の日系製造業、商社・卸業向けに業務管理システムを開発・導入。在タイ10年。
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